蒸気船の旅、ドーリー・スチームボート

スチームボート、つまり蒸気船と言えば、まさかアリゾナを連想する人はいないかもしれない。日本人が初めて見た蒸気船は、江戸時代末期に浦賀沖に現れた、あの「黒船」だ。4隻の内2隻が蒸気船であった。現在は、交通手段としての役割はすでに終えてしまった蒸気船だが、観光産業の中で大活躍をしている。
そして、アリゾナのソノラ砂漠の中にも観光で活躍する蒸気船がある。それは、ドーリー・スチームボートだ。今月は、この船に乗りながらアリゾナの自然を見てみよう。

 

アリゾナの蒸気船ツアーの始まり

そもそもこの蒸気船の観光サービスは、1925年にさかのぼる。87年も前のことだ。この事業を立ち上げたのは、ジョージ・ムーディーというビジネスマン。当時の
モルモン・フラット・レイクを運行するツアーを始めたのだ。彼はこのツアーを「ユニークなボート・トリップ、ジュニア・グランドキャニオン・ツアー」と呼んだ。ところでモルモン・フラット・レイクは、今のキャニオン・レイクのことである。

 
 

 

 
ドーリー・スチームボートの始まり

時代はさかのぼって1983年。この年にポール・ケネディーと彼の奥さんのドーリー・ケネディーがキャニオン・レイクで船のツアーを開始した。当時は、15人乗りの小さな平底船だった。その時に夫婦が目指していたのは、いつか大型の蒸気船を運行してみせようという夢だった。そして、その夢がまもなく実現した。1925年に現在の大型蒸気船がついに走り始めたのだ。現在最高142人の乗客を乗せられる蒸気船で、毎日砂漠に浮かぶ人造湖を往復90分で運行している。

 

場所

ドーリー・スチームボートは、キャニオン・レイクの湖畔から出発する。フェニックスからキャニオン・レイクに行くには、高速道路US60を東に走り、アイダホ・ロード(Idaho Road)の出口を出て北上。右手に見える大きな山がスーパスティション・マウンテン。アイダホ・ロードは、AZ-88号線という道路と一緒になっている。アパッチ・ジャンクションの町に入りしばらくすると、左右に道が分かれてた分岐点に来る。これを右折して、AZ-88号線をさらに北上。徐々に標高が上がり山間を登って行く。アパッチ・ジャンクションから8マイルほど走ると前方に湖が見えて来る。これがキャニオン・レイクである。数分走るとDooly Steamboatの看板が見える。これを左折するとそこが駐車場となっている。

 

ツアー

船のツアーの種類は、3つある。人気があるのが往復90分の一般クルース。キャプテンがナレーターとなり、キャニオンにまつわる話を紹介しながら進む。途中、ビッグホーンシープ(オオツノヒツジ)やイーグル(ワシ)が現れたりして、高い岩山の上から船を見下ろしている光景に巡り会うこともある。チケットは$20(13才から59才)。60才以上は、$19。5才から12才は、$12。4才以下無料。
アストロミー・ディナー・クルースというツアーも月に一回出ている。これは、夕方出発して夜空の下をバフェスタイルの夕食を囲みながらクルースするもの。天文学の専門家が様々な説明をしてくれる。チケットは、$67.95(大人)。5才から12才が$44.95。4才以下無料。
トワイライト・ディナー・クルースは、2時間半のツアーでやはり夕方出発して、本格的ディナーを楽しみながらのツアーとなる。チケットは、$59.95(大人)。5才から12才は$36.95。4才以下無料。
予約は、電話480-827-9144、または、オンラインhttp://www.dollysteamboat.com/book-cruise。

 
 
   
 
   
 
   

キャニオン・レイクとアパッチ・トレイル

今から100年以上も前、フェニックス周辺は人口が増え始め、農業用水と電力の確保が将来の発展のカギとなっていた。そこで注目されたのが、ソルト・リバーという川だった。この川はアリゾナ東部の高山から今のマリコパ郡一帯まで流れ、ヒラ・リバーと合流していた。農業用水はこのソルト・リバーから引っ張ってきていたが、時折起こる大洪水に多大な被害を受けていた。そこでこの川の治水と同時に水力発電を目的にダムを建設することとなった。建設地は、今のアパッチ・ジャンクションに北東、グローブの北と決定された。1911年にここにダムが建設され、当時の大労相の名前を取ってルーズベルト・ダムと名付けられた。そしてそのダムによって出来た人工の湖はルーズベルト・レイクと呼ばれる。このルーズベルト・ダムの建設に欠かせなかったのがフェニックスと工事現場を結ぶ道路だった。砂漠の真ん中を走るソルト・リバーに沿って建設資材などの運搬を目的にした道路が建設された。これが、今のアパッチ・トレイルと呼ばれる道だ。
このアパッチ・トレイルに沿ってその後、3つのダムが建設された。そしてその結果、人工湖が3つ誕生した。ルーズベルト・レイクの下流にアパッチ・レイク。そしてキャニオン・レイク。その下流にサワロ・レイクが生まれた。キャニオン・レイクは、1925年に完成したモルモン・フラット・ダムによって誕生した湖である。アパッチ・トレイルに沿ってできた4つの湖の内、最も小さい規模だ。釣やモータボートなどリクレーションでにぎわい、その周辺もハイキングやキャンピングで人気がある。
このキャニオン・レイクより2マイル東には、トーティヤ・フラットという名の小さな建物が数件並んだ場所がある。もともとルーズベルト・ダムの建設時に幌馬車の停留所として始まった。今でもルーズベルト・レイクを訪れる人たちの停留所のようになっており、レストランやギフトショップが観光客でにぎわっている。