チャンドラー市
農業のメッカからハイテクの町へ(6)

過去5回にわたり、チャンドラー市の変遷を探ってきたが、今月が最終回。今月は、このチャンドラー市の歴史を詳細に語っているチャンドラー歴史博物館を訪問しよう。
この建物自体が歴史を物語る貴重な建造物だが、市がその遺産を守り、未来の世代に継承していくために博物館として蘇らせたものだ。この建物は、通称、マクロー・プライス・ハウスと呼ばれている。

避寒の家

 

1937年、ミシガン州デトロイトに住んでいたウィリアム・マクロー(William McClullough)は、ミシガンの厳しい冬を逃れて、アリゾナに避寒を求めてやってきた。デトロイトで事業を営んでいた彼は、チャンドラー市のサン・マルコス・ホテルでアリゾナの冬を楽しむことにした。温暖な冬を過ごしていた彼は、アリゾナに家を建てることにした。そこで、附近の土地をさがし、ついに320エーカー(約40万坪)もの敷地を購入した。
そして、当時フェニックスで有名だったロヤ・レスチャーとレスリー・マホニーという建築家を雇い、家のデザインを頼んだ。
翌年1938年にこの家は完成した。
彼の家は、アメリカ南西部独特のプエブロ・スタイルで、土塀の壁とタイルの床。熱い太陽光線もシャットアウトできる。4寝室とメイド用の部屋、屋根上にパティオ、裏にバーベキュー用グリルが壁に埋め込められた。当時としては、かなりの高級住宅となった。

 
プライス家

現在、チャンドラー市には、プライス・ロード(Price Road)という道がある。このプライスというのは、チャンドラー市で活躍した弁護士の名前、「アーサー・プライス」からきている。
アーサー・プライス(Arthur Price)は、1889年にワシントン州で生まれた。1909年にワンシントン州立大学を卒業後、ハーバード・ロー・スクールに入学。途中で、やはりワシントン州で弁護士をしたいと思い、シアトルのワシントン大学に転学し、そこを卒業した。
1913年、彼は、活況な経済が目立ったカリフォルニア州に魅せられ、州内を旅する。そこで、彼は、カリフォルニアの経済が将来バブル崩壊をする危険性があると見た。そこで、その隣のアリゾナ州に興味を覚え、フェニックスに行くことにした。
フェニックスに着いた彼の目に、鮮やかな未来の光が飛び込んできた。それは、チャンドラーの町だった。当時、サン・マルコス・ホテルが完成し、チャンドラーは新たな街づくりに町中が湧いていた。ここで、弁護士をしようと、彼は思った。そして、ドクター・チャンドラーに法的アドバイスを提供することになった。ドクター・チャンドラーが持つ未来の展望に感銘したプライスは、その後、チャンドラーの町に大きく寄与していくことになる。

 
ルイーズ・チャンドラー

プライスは、アリゾナに移ってきて、チャンドラー家と親交を持っていくと、ある女性に巡り合った。それがルイーズ(Louise)だった。ルイーズは、ドクター・チャンドラーの姪にあたる女性だった。1914年、第一次世界大戦が始まり、プライスは、軍隊に入る。入隊して、戦場に送られる直前に、プライスは、ルイーズと結婚する。

 

 

 

 

 
戦後のプライス

戦争が終結し、アリゾナに戻ってきたプライスは、チャンドラー市で弁護士を始めた。同時に、土地を購入し、綿花やアルファルファの農作業も営んだ。彼が購入した土地は、現在のチャンドラー・ファッション・スクエア辺りで、プライス・ロードが走っている。
プライスは、チャンドラーが市となった時、市の法人定款を作成した。そして、市の初代治安判事となっている。

   
プライスの家

1950年、プライス夫婦は、家を購入した。それは、マクローが1938年に建てた家屋だった。夫妻は1970年代までこの家に住んでいたが、1971年にアーサーが亡くなり、その後、ルイーズもこの世を去ると、しばらく家屋は、プライス家の子息たちがオーナーとなり、賃貸していた。1980年代まで、周辺一帯、綿花畑が広がっていたプライスの家だったが、その後、アリゾナの経済ブームで畑が急速に住宅街と商店街へと姿を変えていった。
2001年、プライス家は、この家屋をチャンドラー市に寄贈。市では、家の改修工事を行い、2011年に市の歴史博物館として一般公開。また資料研究センターとして活用されている。
マクロー・プライス・ハウスは、チャンドラーの町のパイオニアの資料を保存し、これからも、貴重な歴史博物館として、市民に親しまれていくことだろう。

300 Chandler Village Dr. S, Chandler, AZ 85226

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