人々にお笑いを、
英語落語がアリゾナ訪問

先月、鹿鳴家英楽(須藤達也)さん、一輪(上原雅子)さん、枝豆(塚本理一)さん、万々(新間元子)さんの4名がアリゾナを訪問。セドナ、アリゾナ州立大学、そして、アリゾナ祭りで英語落語の公演を行った。もちろん、アリゾナ公演は、初めての試み。そして、その公演を聴きにきた人たちも初めての体験となった。日本伝統の落語という芸が、英語で、しかも、アリゾナの地で笑いを誘ったという、素晴らしい機会となった。アリゾナ祭りでは、聴き入った聴衆の中から、是非とも弟子入りしたいと言ってきた学生もいるほどだ。
鹿鳴家英楽さん。カナリヤえいらくと読む。英楽さんは、上智大学外国語学部卒業。そして、テンプル大学大学院卒業で教育学修士。現在、キャナリー落語教室を開いて、落語を教えているお師匠さん。教室では、英語だけでなく、日本語の落語も教える。
一輪さん、枝豆さん、万々さんは、その教室で学び、今回、師匠とともに海外公演を果たした。
今月は、このユニークな方々にインタビューして、お話を聞いてみた。

アリゾナにようこそお越しくださいました。アリゾナ祭りでの落語を大変楽しむことができました。ありがとうございます。
まず、今回のアリゾナ公演実現に至った経緯を教えていただけますか。
 

英楽:昨年の夏に、ロス、サンフランシスコ、サンマテオで公演をしました。その時、カルチャー・ニュースをロスで発行されている東さんに宣伝をしていただくことができました。その宣伝をアリゾナ日本文化クラブの前島さんが見つけ、是非アリゾナでの公演をと、招待していただいたのです。

 
そうですか。アリゾナは初めてですか。
   
 

 

万々:グランドキャニオンには行ったことがありますが、フェニックスは、初めてです。
英楽:私もグランドキャニオンは行きましたが、ここは初めてです。
一輪:私も同じです。
枝豆:私は、グランドキャニオンも行ったことがないので、すべて初めてです。(笑)

 
アメリカはどうですか。

枝豆:私は、ニューヨークに駐在で5年間いました。
万々:私は、サンフランシスコとニューヨークとワンシントンDCに旅行で行ったことがあります。
一輪:私は、コネチカットの南に6年くらい住んでいました。
英楽:私は、一番最初にアメリカに来たのは、1985年と1986年で、ロスに一年いました。あとは、何回も来ています。

 
では、英語は問題なかったんですね。

枝豆:そうですね。学生時代から英語は、好きでしたから。
一輪:私は、英語を教えていましたので、大丈夫でした。
万々:私は、40代になってから勉強を始めたんです。子供が十代になって、ふと、自分の生活は職場と家庭の往復だけで、何も趣味がないことに気がついたんです。このまま年をとっちゃったら、面白くないなあと感じました。ある日、職場の近くの公民館に行くと、老人の集まりがありました。そして、そこに来ているシルバーの方々の目がキラキラ輝いているのを見て、「こんな老人になりたい」と思いました。そこで夜の英会話学校に通い始めました。それから海外の一人旅を始めたんです。まず、ニュージーランドに行きました。そうして、英語の勉強と海外旅行を続けてきました。なかなか上達しなくて、、、

 
いやいや、あの落語を英語ですべて暗記するんですから、すごいことですよ。
では、落語の話を伺いましょう。

英楽;私は、立川談志さんに弟子入りしたのが、出発でした。1984年のことです。そして、1991年に落語教室を始めました。これは、立川流との関係で、立川志らくさんにお願いして、講師をしていただいて、スタートしました。その間、私は、もともと英語の落語教室を開きたいと思っていました。それからが、1982年ごろ英語落語を日本で最初に始めたんです。その影響があって、私も2007年に英語落語の教室を始めました。

枝豆:私は、英楽先生の英語落語教室の新聞記事を目にして、2009年に参加しました。それから3年ほどして、仲間から日本語の落語も始めた方が良いと言われ、日本語と英語でやってきました。もともと子供の頃から落語が好きだったんですが、自分で始めるのは、英楽先生の教室に入ってからでした。

一輪:私は、英楽先生と一緒に仕事をしていましたので、英楽先生が英語落語を始めたことを知ってました。それで、私も入れてもらおうと思って始めました。2012年のことです。

万々:私は、英語がなかなか上達しなくて、海外旅行に行かない限り英語を使う機会がないので、英語の勉強も諦めかけていた時があったんです。ところが、ある時、大島希巳江さんという方が英語落語をやっているということを知り、実際に舞台を観に行きました。そこで、英語落語に感化されまし。英楽先生が教室を開いていることがわかり、4年前に教室に入ることにしました。

それでは、その教室のお話を聞かせてください。
 

英楽:教室は、4つあり、一月に一回のクラスです。今は、40人くらい方がいます。

 
どのような方が教室に入ってくるんですか。
 

英楽:退職した方もいますし、若い学生もいます。幅広い年代層で、いろんな人が趣味として学んでいますね。

 
英語落語は日本社会で定着しているんですか。
 

英楽:まあ、、定着しているとは言えないですね。
一輪:英語落語を一般の人にしても、わかってもらえる層は多くないですから。でも、前から英語落語を英語の教育に使おうという試みは、あったと思います。私も、英語教育に携わっていますので、わかります。

 
日本語の話を英語で表現する落語ですが、話の内容を変えるようなことがありますか。
 

英楽:英語圏の人にわかってもらえるように、少々変えることもあります。「落ち」が大切なので、日本人にしかわからない固有名詞などを使う「落ち」では、その表現を変えることもあります。たとえば、「織田信長を殺したのは誰だ?」を「ジョンFケネディーを殺したのは誰だ?」としたりするんですね。

 
日本のお化けは、足がありませんが、西洋のお化けは、足がありますよね。
 

一輪:日本のお化けは、足がありません、と言う場合もあります。
英楽:「のっぺらぼう」とか、お化けが人を食べるとか言う時に、両手を前にだらりと出して表現したりするんですが、それに説明を加えることもありますし、説明なしに、皆さんの想像力にまかせて話を進めることもあります。

 
今回、日本祭りで公演をしていただき、日本に関心のある人たちが聴衆でした。ところが、その前にセドナに行かれて公演をされましたね。セドナは、日本的なものが全くない会場で落語をされた訳ですが、聴きに来られた人たちの反応はどうでしたか。
 

一輪:良かったですよ。
英楽:すごく良かったですね。
一輪:何を言っても、皆さんが笑って下さって、、、
英楽:今までいろんな所で公演しましたけれど、あそこが一番良かったかもしれません。
一輪:とても小さなことでもすごく反応してくれて、私たちの世界に入ってきてくれましたね。

 
そうですか。素晴らしいですね。ところで、今回、皆さんは、全て自費で来られている訳ですが、大変ですよね。
 

英楽:いやあ、、、観光旅行だと思って。その上、地元の人たちの交流もできて、楽しいですよ。
一輪:英語落語をやっていて、一度は海外でやってみたいと思ってましたから、とても嬉しですよ。地元の皆さんがとても良くしてくださって、普通の観光旅行ではできないような、素晴らしい体験ができました。
英楽:こちらも自費ですが、受け入れて下さった方々も、皆ボランティアではないですか。その意味では、地元の方々にとても感謝しています。

 
来年も来ていただけますか。
 

英楽:もちろん、ご招待いただければ、是非とも来させていただきたいですね。
枝豆:我々以外にも他の仲間もいますからね。こちらに来たい人はいますよ。
英楽:一回だけで終わってしまうより、この公演が祭りで定着したら良いですね。

 
英語落語の将来について伺いたいのですが。これからチャレンジしようとされることは、何かございますか。
 

英楽:そうですね。英語圏の国々は全て、行きたいですね。ニュージランド、オーストラリア、カナダ、それから英語が公用語でなくても、香港とかシンガポールなど英語がよく使われている国で公演したいですね。それから2019年にラグビーのワールドカップが日本で行われ、2020年には東京オリンピックが開催されますから、多くの外国人が日本に来ます。そういう外国人へのひとつのおもてなしとして、英語落語を提供できる場ができれば、と考えています。

 

 
ストーリーを海外のものから使うといういうのは、どうですか。
 

英楽:それは、すでに考えていましてね。実は、かつてシェークスピアの作品を使ってやったこともあります。「ハムレット」と「リア王」をしました。また、アメリカの面白い絵本などを題材に、やってみました。そうすると、登場人物が英語の名前になります。そうすると、もっとストーリーの範囲が広がると思います。
また、英語圏だけでなくて、南米やアフリカだって、面白い小話があります。そういうのをアレンジして、落語にしてその国でやったら、楽しくなりますね。

 

 
皆さんの芸名の由来を教えてください。

英楽さんのウェブサイト:http://school.jorudan.co.jp/eigolike/pc/rakugo/index.php

英楽:私は、英語を楽しむ、ということで「英楽」としました。落語をとおして英語を学ぼう、ということです。日本だと、英語の勉強は試験のためになってしまっていますよね。それを全部否定する訳ではないんですが、それだけのために英語を勉強するのは、間違いじゃないかと思います。英語は、人とのコミュニケーションをするために学ぶわけですから、英語落語などを通して、英語を楽しむことができたら素晴らしいです。そのようなメッセージを込めて、「英楽」としました。
一輪:私の場合は、この芸名をつけてもらったんです。
英楽:芸名をどうしたらいいかわからない人には、名前を私がつけることもあります。「一輪」というのは、「花一輪の可憐さ」ですかね。(笑)
一輪:そこで笑ったらだめですよ。(笑)名前の通りです、と言ってもらわないと、、、(笑)
枝豆:私は、英語落語に入門した当初、クラスが終わると飲み会に行くんですね。その時、まだ入門したばかりの私ですので、一番安い酒のつまみを食べることにしました。そして、一番安かったのが、枝豆なんです。それで私の席の前は、枝豆が山盛りになっちゃうです。それで、「枝豆」という芸名がつけらちゃったんです。
万々:60歳以上の役者で構成する劇団が出来た時、その名前が「波乱万々座」という劇団だったんです。それは、人生が波乱万丈であったことから、こういう名前ができたんです。私もその劇団の名前から自分の芸名を「万々」としたんです。

 
今日はお疲れのところ、大変ありがとうございました。今回は、本当に楽しく英語落語を聴くことができました。今後のご活躍をお祈り申し上げます。
 

英楽:私たちも大変面白い経験をさせていただきました。ありがとうございました。