アリゾナで訓練を受ける日本のパイロットの卵達

アリゾナは、パイロットの研修に最適の場所とされている。それは、アリゾナの年間快晴日数が300日を超えるため、航空機の操縦訓練には、もってこいの条件を備えているとされる。
ちなみに、この年間快晴日数だが、日本でトップの県が埼玉県で、その数は、64日。日本の全国平均が28日というデータが出ている。
アリゾナのこうした環境に最初に目をつけたのは、何と言っても、米空軍だった。空軍基地がアリゾナに建設され、多くのパイロットが訓練を受けてきた。実は、このことがアリゾナの急発展に大きなインパクトを与えた。空軍基地周辺に航空産業や軍事産業が次々と州内に工場を作り、ハイテク産業がそれに続いたからだ。
アリゾナ州内には、パイロット研修所が50か所もあり、次々と新たなパイロットの卵が巣立っている。
この中には、日本航空のパイロットの卵達がいる。今回は、その訓練所を訪ねて、訓練生の一人、徳久篤弘さんに話を聞いてみた。

 

 

毎日訓練に励む徳久さん

パイロット研修所として使われているファルコン飛行場
アリゾナの訓練所

日本航空は、かつてカリフォルニアのナパで実機訓練をしてきたが、2010年の破綻の時に、訓練が中止。その後、コストの高い海外での自社訓練体制を見直し、海外のパイロット研修所に訓練を委託する可能性を求めた。複数の訓練所に当たった結果、フェニックスの郊外、メサ市にあるファルコン飛行場でCAEオックスフォード社がパイロット養成のプログラムを実施していることがわかった。CAEオックスフォード社の親会社は、CAE社で、カナダに本社を構えるパイロット訓練用のシミュレータ装置を製造する会社だ。そのグループの一つであるCAEオックスフォード社は、パイロットの養成訓練所を世界各地に持っている。日本でCAEのシミュレーターを使ってきた日本航空は、この会社にパイロット養成訓練を委託することに決定。2014年に最初の訓練生を日本から送った。
現在、日本からは、教官8名(機長7名、副操縦士1名)、業務企画職2名がメサに配属され、現在、訓練生75名が訓練を受けている。訓練生は、2ヶ月ごとに1グループが日本に戻り、新たなグループが日本から送られてくるようになっている。

 

 

日本航空のパイロット養成プロセス

 

まず、パイロットの卵たちは、新規学卒者として採用されると、日本の空港などで地上研修を約1年行い、その後、訓練に入る。訓練は、最初に羽田の訓練所で飛行機の仕組みなどを3ヶ月かけて学ぶ。そして、その後、アリゾナのファルコン飛行場で基礎訓練が始まる。ここでは、最初の8ヶ月、飛行訓練装置と単発プロペラ機で基礎課程訓練を受ける。そして、次の6ヶ月は、飛行訓練装置と小型ジェット機の操縦の初期課程訓練となる。小型ジェット機は、メサ空港に行って、そこで操縦を学ぶ。
こうして、1年余の海外訓練期間を終えると、次は、日本に戻り、羽田でシミュレーターを使った中級課程の訓練を4ヶ月受ける。そして、いよいよ上級課程に入り、シミュレーターとボーイング737型機の操縦訓練に入り、最後の一週間は、グアム島での訓練となる。グアムでは、実際にボーイング737型機の離着陸訓練を受ける。
この一連の訓練を受けきると、ライセンス取得の試験が待っている。この大変厳しい試験に無事合格すると、晴れて副操縦士昇格課程に入り、実際に日本各地で路線訓練を約6ヶ月受けることになる。
この全体のパイロット養成期間は、約2年半という時間を要する。
すでに70名の訓練生がアリゾナでの訓練を終了。日本でさらなる訓練を受けている。そのうち5名が副操縦士として、本年2月27日からボーイング737型機の乗務に従事している。そのうち1名は女性の副操縦士で、パイロットの分野でも女性進出が目覚ましい。

 
徳久篤弘さん

山口県生まれ。実家のすぐ近くに山口宇部空港があり、子供の時から飛行機に憧れていた。大学を卒業し、日本航空に就職でき、小さい頃からの飛行機の夢の実現に近づいた。いよいよパイロットの卵として、訓練に入り、昨年アリゾナに訓練生として送られてきた。
最初は、アリゾナがどこにあるのかも知らなかったという。砂漠と聞いて、何もない荒涼とした砂漠を想像していた。ところが、アリゾナに来てみて、その先入観は一掃された。フェニックス市が全米5番目の大都市であることにも驚いた。
そして、アリゾナは住みやすい所だと感じるようになった。とにかく広い。道も広い。日本とは、全く違う。気温は高くて暑いが、乾燥していて気持ちがいい。冬は最高の季節だ。
メサの飛行訓練所には、日本航空以外にインド、中国、中東、ヨーロッパなどの外国航空会社からやってくるパイロットの卵がたくさんいる。そういう人と友達になり、サッカーなどをすることもあるという。
今年の9月か10月には、アリゾナでの訓練を終えて、帰国する予定だ。日本には、奥さんと2歳になる娘さんが待っている。
これから、徳久さんを始め、このアリゾナで訓練を受けた多くのパイロットがジェット機で世界に羽ばたいていく。