アリゾナ初の風力発電所

場所は、ナバホ・ネーションと呼ばれるナバホ族保留区。広大な砂漠の大地に3枚の巨大な羽がついた扇風機のようなものが30台立っている。その羽は時折ゆっくりと回転し、アリゾナに広がる青空を羽ばたいているようにも見える。
これが、アリゾナで初めて完成した本格的な風力発電所である。風力エネルギーは、再生可能エネルギーの一つで、自然環境を破壊することなく、しかも、発電源はガス・石炭など化石燃料による発電所よりもはるかに安価である。広大な敷地さえ確保すれば、電力を安全で経済的に確保できる。
今回は、この風力発電所を訪ねた。

 

 
ドライ・レイク・ウィンド・パワー・プロジェクト

ドライ・レイクは、その名の通り乾燥し切った湖。この一帯に大雨が降って洪水にでもなれば、水が溜まっている風景が見れるかもしれないが、ほとんどの場合、乾燥している。そのドライ・レイクが近くにあるので、風力発電所の名前として使われている。
発電所は、2009年に完成し、63万メガワットの電力を発電している。発電タワーは、30台設置されていて、タワーの高さは、88メートルで、その重量は、204トン。羽の部分のブレードは、長さが43.25メートル。3枚のブレードの軸に連結されたナセルは、79トン。
スペインに拠点を置く電気事業グループ、イベルドローラ社がナバホ郡の地主たちから土地リース契約を結び、発電所を立ち上げた。そして、アリゾナの大手電力会社であるソルトリバー・プロジェクト社がここから電力を100%購入し、フェニックスとその周辺のメトロに配電している。

 

ある男の発案から生まれた風力発電所

 

アリゾナのナバホ郡にある小さな町、スノーフレーク。その町の近くに牧場を経営していた男がいた。その名はビル・エルキンズ。エルキンズは、ナバホ郡にある牧場がだんだん無くなっていることを心配していた。それは、牧場主の多くが経営困難に陥って、ナバホ郡を去っていくためだった。彼は、何か新しいことを始めて、彼の牧場を維持する必要性が迫ってきていると思っていた。
そこで気がついたのは、ナバホ郡に横たわるとてつもないほどの広大な土地だった。その利点を使って新たな収入を作るには、風力発電が最適だと確信した。そのアイデアを他の人たちに語ったが、当時、真剣に取り合ってくれる人は少なかったようだ。彼は、以前からアメリカの各地を旅して、中西部、オクラホマ、ニューメキシコなどで再生可能エネルギーの風力発電所を目撃してきていた。「なぜ、アリゾナではできないのだろうか」と思っていた。
意を決した彼は、自分でタワーと風力計を購入してみた。それを自分の牧場に設置し、風速を測った。そして、フラッグスタッフにある北アリゾナ大学にこの企画を持ち込んだ。好機到来か、北アリゾナ大学は、この話に乗り気になった。そして、彼とパートナーシップを取ることに決め、彼は、学術的な支援も得た。約7年の調査で、アリゾナでの風力発電は確実に可能であることを確かめた。
そこで、彼は、その調査結果を風力発電会社に持ち込んだ。いろんな会社に当たってみたが、イベルドローラ社がその企画に興味を示し、最終的に、発電所を作ることに同意した。
この発電所の誕生は、ナバホ郡の住民にも多大な恩恵を与えた。イベルドローラ社は、土地利用のリース契約で、土地所有の住民に賃貸料を支払うことになったからだ。その結果、ナバホ郡は、その税金収入を受けることになった。発電所の建設工事は雇用拡大を生み、これまた、郡にとってプラスとなった。
エルキンズは、こうして、牧場を諦めることなく、ナバホ郡で、新たな事業を生み出し、昨年逝去している。たった一人のアイデアから始まったアリゾナの風力発電だが、これから、様々な地域にも出現することになるようだ。
アリゾナ最大の電力会社、アリゾナ・パブリック・サービス社も風力発電所を州内に建設する計画を発表しており、アリゾナの風力発電には、大きな未来がある。
アリゾナ州では、2025までに全州15%の電力を風力発電から取るという目標を掲げている。また、米国エネルギー省では、2030年までに全米の20%の電力は、風力発電から生まれるという予測をしている。